昔の漫画
絵は雑で下手だしコマ割はフリーハンドだし鉛筆で適当に塗ってあるけれど、素直に面白く読める。かつては体裁を気にせず、下書きもない状態で創作意欲の赴くままに絵が描けたので良かった。今は細かい粗が気になりすぎて、気取ったものを作ろう作ろうとしていたら、とうとう描けるものがなくなってしまった。
芸に必要なのは勢いだと思う。人が何かの道を極めていくためには勢いが必要だと思う。
絵画でも音楽でもプロの人の仕事を見るに、タッチに迷いがない。商業的なものである以上、ある程度人の目は気にするのかも知れないが、筆を運ぶ瞬間、撥で弦を叩くその瞬間には一点に集中しており、迷う暇がない。素人や下手な人であればあるほど、間違うことを恐れて勢いが失われており、却ってミスしたり線を重ねてごわごわめそめそしており、見ていて面白くないものになっていると思う。
自分の昔の漫画は、技術が圧倒的にないため素人くさくて下手くそだが、勢いだけはあると思う。今こんなものを描けと言われたって、もう絶対に無理だろう。
世の中窮屈すぎてやりづらいことばかりだが、誰かが怖くて何かができるか。
その殻を破れば、最初はやりにくいかも知れないが必ず上達の道が待っている。だが、この一歩がなかなか踏み出せないのだからなかなか困ったものである。